修復

〈写真〉
左:修復後
右:修復前

〈掛け軸〉
池上 秀畝「前赤壁」
一文字:八色間道 唐草牡丹紋 金襴
中廻し:浅葱地 唐草大牡丹紋 金襴
天地:フシナナコ
軸先:角

 世にある様々な作品は、丁寧な保存、もしくは偶然良い環境に置かれない限り、必ず痛んでくるものです。そうなったとき、修復をすることになります。国宝や重要文化財などは、一般の表具師ではなく文化庁と連携した仕事となり、国立博物館など修復を主とする工房での作業となります。その工程は数年に及ぶこともあり、多くの時間と知識、技術が必要です。また赤外線写真、顕微鏡による検査など、科学的にもしっかりと記録を残しながら進めていき
ます。

 新しい掛け軸を仕立てるより、修復は大変に手問のかかるものです。何より作品の状態に対しての知識と技術を大いに要します。表具の場合ただでさえ薄い素材に描かれた作品が、劣化によって素材はさらに弱くなり、少しの力で簡単に破けたりしてしまいます。多種多様な作品が、どういう工程を踏めば安全に、確実に修似できるのか。それを知るには、かなりの修練をしなければなりません。しかし、お客様からご要望される修復の全てを、国宝や重要文化財のような扱いとして修理することはできません。そういったときに一般の表具師の出番となります。
 

 修復のエ程自体は、一般の作品も国宝などに施すこととそう変わりはありません。ただし数年もかけるわけにいきませんから時間短縮として工程を簡略化、予算と照らし合わせて最適な方法を模索していきます。
 国宝や重要文化財の修復は、そのものの学術的な価値、美術的な価値など、その作品の在り方から修復する方向性、程度などを詳細に考えていくようですが、一般的には「とにかく今よりキレイにする」ことが求められると思います。具体的には、シミがあったら削す、破れていれば繕う、シワがあれば伸ばすということでしょう。しかし全てをキレイに、新しくすればいいわけではありません。経年の変化で作品が茶色になったものは、時代が経ったからこその味わいがあります。古い作品を新品のようの真っ白に漂白してしまうのは、何十年も残ってさたことの風合いをすっかり消してしまうことです。取り合わせている裂地が良いものであれば、裂地もきれいにして再利用することもできます。

 修復の方法は、表具師によって実に様々です。一応のセオリーはあるものの、それに加えられた代々引き継がれる方法や道具、個々の表具師が編み出した方法、使う材料などそれぞれに工夫があります。作者は色んな方法で作品を作っていますから、それだけに修復にも完璧な答えがなく、臨機応変な対応が求められるといえます。ボロボロであったものが、すっかりキレイになって戻ってくると愛着が湧くものです。「値段もつかないだろうから、どうしよう」という方も多いですが、その作品が好きかどうかを一度考えてみてください。それがお直しする指針になると思います。どうしても市場価値で判断したくなりますが、国宝だろうと一般の作品であろうと、この世に一点しかありません。捨てれば、それで終いになってしまいます。

 ご予算などに見合った修復も可能です。表具師との相談によって、皆さまにとってかけがえのない作品が「ひと部屋の華」として戻ってくることと思います。