表具の豊かさを知ってもらう



表具展や表装展という言業はあまり馴染みがないかもしれません。表装展は、表具にスポットを当てた技
術披露の場といえます。各都府県の表具組合の主催で、そこに加盟する表具店が、仕立てた作品を持ち寄って展覧会とすることが一般的です。表具の本場、京都では「表展」と題して明治から催され、現在100回を越える歴史をもっています。
私の場合、それを個展として開催しているのですが、表具のバリエーションを増やす目的、技術向上、飾りつけ方の勉強も兼ねて行なっています。まず展覧会での20点近い表具を用意するためには、その数の作品がなければ始まりません。作品の無い表具を掛けておくにはいきません。どんな作品を用意するか、書の作品ばかりでは少し色味に欠ける、しかし絵画ばかりでは仕立てる表具に偏りができるでしょう。
書の場合は白と黒の世界ですから選べる裂地の種類は格段に増えますが、かえって悩みます。絵画の場合、作品に色がありますから、色と雰囲気を受け取って裂地を選ばないといけません。かといって、展覧会だから派手にすればいいというものでもありませんし、無難なところで落ち着くには、私の今の年齢では早い気もします。日頃のお客様からのご注文では、あまり突拍子もないものはいたしません。無難より、半歩か一歩でたところを心掛けているつもりですが、個展では「これは普通なら怒られるかな…」というところを狙っています。パリコレのようなファッションショーを目指すのもいいのかもしれません。デザイナーの服は普段では到底着られないでしょう。そのような表具も作れるのかを考えてみるのも面白そうです。ただ、ここで難しいのは「表具」だけでは完結しないところです。
表具師は描かれた作品を支える職人です、その作品をよく魅せられるようにする。モデルが作品で、着る服が表具であるならば、色々なスタイルのモデルが主役です。たとえば真っ白な紙をド派手に表具して、「私は表具の芸術家です」ということもできましょうが、自分とは違う人の描いたものを、出過ぎず、引っ込みすぎず、ギリギリのラインでどうするか。かつ、伝続的な掛け軸の形の良さや作品の季節に沿った裂地の取り合わせ、しっかり盛り込むようにする。そこが表具師としての面白いところだと感じます。ご覧になったお客様からは「表具がこんなに種類があって、色も綺麗だと思わなかった」といった意見も多くいただきました。
表具、表装というものが、暗い和室の奥にかかりっ放しの掛け軸のイメージではなく、作品と調和した色合い豊かなものであるのだと、皆さまに知っていただけると嬉しい限りです。

